わたしたちに明日はない

映画をよく観てます

感想:「沈黙-サイレンス-(Silence)」★★★★☆

 

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    マーティン・スコセッシ監督が遠藤周作原作の「沈黙」を長い年月かけ、やっと映画化させた本作。原作を10月ごろに読了してからというもの今日という日を心待ちにし、前売り券をしっかり買って観てきましたよ〜!

    マーティン・スコセッシ監督の「タクシードライバー」はあんまりタイプの映画じゃなかったし、「ウルフ・オブ・ストリート」などは予告観るだけで「こ、これは肌にあわない…!」と判断するに至ったので、そんなに期待しているわけでもなかったのですが、結論から言うと原作に忠実という点でとてもよかったです。よかったですぞ。

    物語に対しての感想はすでに小説を読んだときの感想記事で書いたので、原作を踏まえた上での感想を書いていきますね。

 

 

    上映時間は3時間弱とけっこう長めなのですが、観ているあいだはその長さはあまり気になりませんでした。(終わった後に「…ながっ!」と思ったりはしましたが。)中弛みしない3時間弱でした。

    それにしても、外国の方が撮ったとは思えないほどに「日本」でした。違和感がなく、方言の飛び出る場面も。台湾がロケ地だそうですが、べつにいいんだけどせっかくなら日本で撮ったらよかったのに、なんて。

 

    ただわたしのなかのキチジローは窪塚洋介じゃないんですよ!もっと卑屈そうで小汚い背の低い日本人顔の男なんです。あんなにしっかりした顔立ちのイケメンではないし、背も高くないんです。あくまでわたしの頭の中のキチジローですけど…。

    演技よかったですけどもっとなんか!あんなにしっかりしてないというか!「ケヘヘ」みたいな笑い方しそうな感じなんですよ。(個人的な感想です)

 

    井上様はほかより一際存在感があって、「あ〜こんな感じ〜そうそう〜」みたいな、かゆいところに手が届く感じでした。彼の元切支丹設定は出てこなかったけど、サラッといれてくれるだけでも違うのにな〜。わたしがスルーしたのかな。勘違い?

    いま小説は人に貸し出し中なので、確認できないのがもどかしくもあり。でも傑作なのでいろんな人に読んでほしい、ほんとに。

 

    それにしてもよくまとまってました。それでも要所を全て抑えたがために尺が長くなって、わたしがインパクトを受けたシーンや印象深い点がさら〜っと流れていってたとこもあって、「もうちょっとなんとか!なんとか!」と思ったりも。でもその「もうちょっとなんとか」を全て拾っていけば3時間は間違いなく超えるので仕方ないのかも。取捨選択した結果なのでしょう。

 

    以下ネタバレ。以前も言ったけれど、ネタバレを見たところで観る価値のなくなる小説、映画ではないので、あんまり問題はないかもしれませんが。ただ映画のラストは原作とはすこし違っていたと思うので、そこだけ。

    わたしが原作で好きな、「干した魚の味と喉の渇き」「瓜をくれた」的な表現(うろ覚え)を何度か利用することによって、印象づける技はやっぱり小説だからできることだな〜と実感。映画では干した魚、というか焼いた魚?はキチジローの罠でしかなかったけれど、小説ではその味や喉の感覚によってロドリゴの心境を繰り返し表現できていて、そこが映画にはない小説の良さ。

   それで一番おい!とおもったのが人の呻き声を鼾と勘違いしていたと知るシーンや、穴釣りにされた人たちはなぜ転ぶといわないのだ!というロドリゴに、この人らはみんな転ぶとすてに言った、お前が転ぶといわないからだ、みたいなことを告げられるシーンのインパクトが映画では皆無だったこと…。閉じ込められた部屋に刻まれた文字の存在もそんなに大したことないような感じだったしそもそも閉じ込められている間の葛藤というか思い巡らす時間がバッサリカットで、わりと大事なとこなのに!と。

    けれどもまあ心中の長い葛藤を映画で表現するのにはなにかと限界はあるよね。フェレイラさんとの対面も、小説ではわたし的に一番盛り上がったけど、映画じゃなんてことなかった。

   でも小説ではいまいちわからなかった穴釣りが、あんな感じなんだと視覚的に理解できて、苦しみがよくわかった。あれはつらい。

 

    ラストは、小説では明示されてなかったことを映像で付け足してありましたが、まあ映画としてはありかなとおもいました。わたしもきっとそうだろうなと思います。彼は信仰心をすべて捨ててしまったわけではないのでしょう。

 

    とりあえず原作が傑作すぎるのによくここまで再現してくれた…!ありがとうという心持ちです。原作ファンが増えることを祈って。

 

 

おわり