わたしたちに明日はない

映画をよく観てます

感想:「レッドタートル ある島の物語」★★★★☆

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    映画館で予告を見たときの感想は「なんかつまんなそう、ジブリっぽくない」でした。観終わったあとの感想は「芸術的にジブリだった」です。

 

    チケットを買ってから時間になるまでひまだったので、ツイッターの検索窓に「レッドタートル」までいれると、予測変換に「レッドタートル つまんな」というのがでていて、え!つまんないの!とびびりつつそのワードで検索すると、だいたいみんな「観てはないけど、つまんなさそう」という内容のツイートでした。(映画を観たのは公開当日だった)

    観たひとがつまんないといっているのではなく、わたしのように予告を観て「つまんなそう」と感じたひとばかりだったので、「ダヨネ」と思いつつ劇場に運んだのでした。予想通り劇場はがらがらでした。家族連れが一組いたけれど、後半子供がしくしく泣いていました。わたしも子供だったら津波のシーンで泣いてるよ。

 

 

 どういう感じだったかというと、まんまキャッチコピーでしたね。いのちはどこからきてどこにいくのか…なんとなく感覚的にわかった気がします…。セリフは一切なく、音楽と映像だけ。けれどセリフやナレーションなんかなくたって十分にわかるくらいにすべてがシンプルで、無駄をそぎ落としてある心地よさすらありました。

 ていうか映像がめちゃめちゃ美しい。音楽も。それだけあればあとはなにもいらないってくらいに美しい。はじめ男の顔のシンプルすぎるデザインに笑いそうになったけれど、あれくらいシンプルじゃなければマッチしないなとあとから思いました。

 

 前半は無人島に流れついた男のサバイバルと孤独が楽しかったです。あの岩と岩の間におっこちてしまうくだりははらはらしました。そしてその水たまり?にもぐって外へと通じる道を探して、穴に身をつっこんでじたばたするくだりがこの映画で笑いという意味では一番おもしろかったかもしれない。そのひとの焦りや葛藤がすごく伝わってきたのが笑えた。

 

 あらすじで「島を出ようとする男は見えない力でなんども引き戻される」的な説明があるけど、映画をみてるときはあの赤い亀が体当たりで妨害しているのかと思ってた。だから、最後まで添い遂げたときにそのシーンを思い出して、この亀はこの男をどこかでみていて島から逃れようとするたびに、妨害していたのかと。あらすじの説明からいくと、みえない力で妨害されているところにちょうど通りかかったことになるのかな?でもそうだとしたら亀が妨害していると思って憤慨した男からひっくりかえされたり甲羅叩き割られたりした亀が不憫すぎる…?

 

 ネタバレもクソもない映画だと思うので内容にじゃんじゃん触れますけれど、亀ちゃんしんじゃった…と思った次の瞬間女の人に変身していたときはすごくギョッとしました。そんな話だなんてきいてないよ!という心境。最後までどうして亀が女になり、女が亀にもどったのか説明なんてものはなかったけれど、べつに説明の必要性もとくに感じなかった。ただびっくりしたけど、その後の彼らの暮らしぶりをみてどうでもよくなった。

 そしてとにかくカニちゃんたちがとってもかわいかった。彼らの存在がこの作品をすこし明るいものにしていたと思います。べつに暗い作品ってわけでもないけれど。

 

 ただ津波のシーンがすごく迫力があった…。この国はあの震災を体験して、それをどう受け止めるかどう感じるか避けては通れない要素として、「シン・ゴジラ」や「君の名は。」わたしが読んでいる「デッドデッドデーモンズ以下略」などをはじめ様々な作品に影響を与え続けているナ~なんて思っていたら、この作品の津波要素は震災前から確定していたことだったそうで、監督はこのままにするかとても迷ったというインタビュー記事をちょっと読みました。

 そのままのこしてくれてよかったです。震災後にそれを足されたのでなく、震災前からそのメッセージを伝えるために作っていたという事実に、なんだか勇気づけられました。人間は自然と共存しているということ、美しくおそろしいものだということ。そしていつかはまた植物は芽吹き土地は生き続けるということ…そういうものなんですね…。

 

 ジブリが好きというただ一点のみでこの映画を見に行くと落胆するかもしれません。家族連れでいくような映画でもないと個人的に思います。(子ども泣いてたし)

 けれどジブリがよく扱う「いきる」というテーマをとてつもなくシンプルに芸術的に流れるようにまとめてある作品だと思いました。エンドロールでの余韻が濃厚でした。わたしの人生と暮らしのこれからに思いをめぐらせました。なぜかちょっと泣けそうでした。

 

 人に勧めるかといったら特別すすめはしないでしょう。「シン・ゴジラ」のほうを思いきりおすすめすると思います。大衆に全く受けないだろうし大爆死だのジブリオワタだのいわれるかもしれませんが、そんなのは気にせずになんでもやっていってほしいですね。

 

 

おわり