わたしたちに明日はない

映画をよく観てます

感想:「帰ってきたヒトラー」★★★★☆

 

    火曜日だけれど「このままでは退屈でいけない!」となぜか思い立ち、日常のルーティーンを崩しに映画館へ足を運びました。「マネーモンスター」も観たかったのですが、レイトショーしかなかったので、「帰ってきたヒトラー」を観ました。

    終映近いのわりとお客さんが入っていて(TOHOでは火曜日がシネマイレージ会員は安いから?)、会社を出る前に事前にネットで席を取っておいてよかったと思えました。便利だよね〜。

 

 

    あらすじはとてつもなく簡潔に言うと、アドルフ・ヒトラーが現代に蘇ったら…?というもので、前半思いの外めちゃめちゃに笑いました。

    軍服をクリーニングに出しにいくくだりとか、世話になった売店のおじさんにビタ一文払わず独裁者的コメントだけ残して立ち去ったりとか。

 

    映画館のお客さんもみんなコンスタントに笑っていて、子供向けでない映画で、あんなにみんな笑ってみているって久しぶりもしくははじめてだなと思っていたのですが、途中で「いや、笑い事じゃなくね?」と気づかされました。

 

    ヒトラーはどこにいっても動物にも好かれるんだ的なことを、ヒトラーをタレントに起用してテレビ局での下剋上を目論むテレビマンサヴァツキという男が、ブリーダーに説明し犬のレンタル交渉をしているときに、後ろでは犬に吠えられコートの裾を噛みつかれるヒトラーの姿があるわけなんですが、その絵面がおもしろくみんな笑っていたんですが、ヒトラーはその犬を蹴飛ばし(ここもまだ笑ってるひとはいました)、ポケットから銃をだして躊躇いなく射殺するわけです。一瞬の出来事で、ヒトラーもなんてことない動作でやってのけるもんだから、みんな笑っていたのがピタッととまり、静まりかえりました。

    そういえば、こういうひとだった、と我に帰るわけなんですが、まだその時点ではそこまで思っていませんでした。後半、ヒトラーを前にしてユダヤ人であるおばあさんが、家族をヒトラーに殺されたと激昂する場面で、再び我に帰るわけです。そういえば、ホロコーストの主導者だった、と。

    そういえばで済む話ではないのに、そのヒトラーにまんまとわたしも、乗せられてしまっていたわけで、全然笑えなくなりました。ストーリーの顛末は伏せておきますが、ラストに実際のいまの世界の人々の映像が流れたとき、なんとも言えない気持ちになりました。

    そしてこの映画をみて、あまり世界のことに無頓着ではいけない、自分の国の実情に目を向けることからはじめなければと反省すらしました。何か思想があっても誰かに扇動されるのだから何も考えていない、無思想のわたしは映画館でそうだったようにまた笑ってただ流されてしまわないようにしなければ。

    素人?に街頭インタビューしてまわるところで妙なリアリティの混ぜ方をされてなんだか少し怖く感じたのですが、理由はよくわかりません。なんだか見ていてすこし不安になりました。

    あと集団リンチっぽくなったところが一番おそろしかったですね。ほんとうに最後までやってしまいそうだし、何より最後に一瞬端に映った女の人の表情で、これ仕込みじゃなくてガチっぽそうだなという感じがして、それが一番怖かったかもしれません。

 

 

    どうでもいいんですが、今回サヴァツキさんのキャラが薄すぎて、もうちょっとなんか、こう、ならなかったのかなとか思いはしました。なんか、ヒトラーだけだったらキツイけど、かといって抜けの要素にもなりきれてないというか、ヒトラーだけだったらキツイからとりあえず置いてる感がするほど存在が薄かったような…。

    それもこれも宇多丸師匠がラジオで指摘してもいましたが、あの犬を射殺する映像をテレビで流されてしまったときの、あの映像カメラワークどうにかしろよっていうのはそのときすごい思いました。不自然にもほどがある。

    そしてその映像出されてあんなに取り乱すのかな…ヒトラーって…となんだかすこし小物感をそこで感じてしまいました。あんなわざとらしい汗かきながら狼狽するより、もっとドッシリ構えて開き直るくらいでいそうに思いましたけれど。

 

    おおむね笑って見ていたけど、「サウルの息子」などを思い返すと、笑っているわけにはいかないのですよね。

 

    おばあさんの、「最初はみんな笑ってた」という一言が強烈な映画でした。

 

 

 

おわり