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わたしたちに明日はない

映画をよく観てます

感想:「リリーのすべて(The Danish Girl)」★★★★★

映画

 

 このあいだ、会社の休憩室でパートのおばちゃんの群れに囲まれてお弁当を食べたのですが、「恋人たち」にでてきた弁当屋のおばちゃんたちの会話がいかにリアリティを極めていたかを実感しました。あの映画はおばちゃんたちが集まる場の雰囲気を笑えるほどめっちゃ再現できている……!

 何度も観たい映画ではないのでそのおばちゃんたちのシーンだけ確認の意味もこめてもいっかい観たいものです。

 

 

 いつのまにか社会人二年目に突入していました。季節の巡りは年を追うごとに加速しているよう。こわいよう。今年度の豊富は「おろそかにしない」です、なにごとも。

 

 前回「サウルの息子」をみて感想をまだ下書きに放り込んだままなのですが、先週末に観た映画のインパクトがわたしのなかで強かったのでこちらを先に。

 


映画『リリーのすべて』予告編

 

 ざっくりいうとこの世ではじめて性転換手術を受けたひとのお話です。といいつつ完全なるノンフィクションではないみたいなんですが、自分を女性だと主張しながら苦悩する夫を同様に葛藤を抱えながら支える妻、ふたりの姿が美しいデンマークの景色をバックに描かれています。

 

 みんな大好きわたしも大好き、英国紳士エリートのエディ・レッドメインくん主演、かつ美しくキュートな愛すべきアリシア・ヴィキャンデルちゃんと共演となれば、これは観にいかないなんてことにはなるわけありません。わたしにとって最強に今アツイふたりが共演するのです。サイコー!

 エディ・レッドメインくんは「博士と彼女のセオリー」でアカデミー主演男優賞を受賞され、今作でもノミネートを果たしております。「博士と彼女のセオリー」での彼の演技はすさまじく、今作もとても期待していたのですが、全然期待を裏切ってくれませんでした!サイコー!

 犬のような人懐こい笑顔もすてきだけれど、それ以外の表情やしぐさふるまい、すべてが細やかで、変化をうまくだせるひとだなと思いました。前回は病気で体が徐々に動かなくなっていく役でしたが、そのときも同様に、彼は変化をうまく表現できていて、すばらしかったです。

 

floweroflife.hatenablog.com

 

 しかし、彼を圧倒するほどに今回アリシア・ヴィキャンデルちゃんも良かったです。そして毎回恰好がおしゃれ。かわいい。エスニックな感じとかとてもよい。しかも美人で大胆さもある。画的に素敵。

 

 なんていうか、扱う題材は全く毛色が違っているけれど、困難に立ち向かう夫婦愛という点では「博士と彼女のセオリー」と重なる部分がけっこうありました。映像は美しいし妻は弱くも強か。その妻の弱さと強かさが交互に現れるたびに涙腺がゆるゆるになってしまいます。そういうところもとてもデジャヴ。

 デンマークの景色もうつくしかった~デンマーク人からは「デンマークには山はない」という非難をくらっているそうですが、わたしからしてみればどうでもいいことです。だって美しいのだもの……。

 しかしまあ、日本にない風景を日本の風景として海外で映画に取り入れられたら違和感から指摘せずにはいられないでしょうけれど。

 

 はじめは女装するエディをみても拭い去れない違和感、「これ誰も気づかないわけ?」と思うくらいにあまりにも女性にみえない。骨格がまず違うし、このごつごつした大きな手はあきらかに男性のものでした。しかし時間がたつにつれて、徐々に、ほんとうに女性に見え始めるんですよ。しかもそのへんにでてくる女性よりもはるかに美しい。

 観ながら、女性、男性っていったいなんなんだろうという哲学のような疑問を持ち始める始末でした。はじめはがちっとして見えた肩幅も終盤にはやわらかななで肩にしか見えないし、逆に男らしさがどこをさがしても見当たらないという状態で、どういうマジックを使っているんだ!といいたくなるほどで。小道具的な工夫もあるのでしょうが、エディ・レッドメイン先生恐るべし。

 

 途中で登場する主人公とおさななじみのハンスによりかかってしまうアリシア・ヴィキャンデルちゃん演じるゲルダの姿はやっぱりデジャヴでしたが、ゲルダがハンスに対して決定的な行動にでてしまったとこでわたしは涙をとめることはできなかったのですよ……。しゃあない……しゃあないよ……あなたは悪くない……。

 家に帰ってリビングに行ったら夫が女装して、大真面目に女のふるまいでいるのを見ることがあればわたしは心の整理ができなさすぎてあそこまでしっかりはしてられないよ。差別的偏見など以前に、自分が一番愛するひとがそういう行動にでているところを突然目の当たりにするっていうのは、尋常じゃない心境になってしまうのはしょうがないもの……。 

 

 ここからネタバレはいります。

 そうして彼がもうほんとうに戻ってこれないと知って、医者を紹介し性転換手術を受けるため汽車に乗って旅立つシーンは、涙なしにはみれませんでした。男だとか女だとか以前にふたりの間には六年間一緒にいたという絆や愛があって、ふたりの視線だけでもう……もう……。

 そしてゲルダの制止もふりきって二度目手術をうけた彼女は、やっとほんとうの自分になれたと幸せそうな表情で、亡くなってしまったわけなのですが、映画がはじまるまではまさかラストでなくなってしまうなんて思ってもいなかったので、エンドロールが終わっても涙が……。ひとりでみにいけばよかったと思うほどに。

 ラストにでてきたお墓、たしかに見覚えあるなと思ったら映画の冒頭ですでに景色のなかにあった気がする。

 

 トランスジェンダーを題材にして悲劇の映画を撮るなという批判もあるようですが、わたしは悲劇だとは思いませんでした。確かに主人公は自分の性が違うことでずっと苦しみ続けていましたが、勇気を出していまだかつて誰もしたことがない手術を受けることで自分の性を正し、満足を得て亡くなったわけですから!単純に悲劇だとは、言い難いと思います。

 そしてなにより彼女には、ときに反発をし合いながらも、心の底から愛してくれるパートナーがずっといてくれたのですから、彼女にとってこれがどれほど幸福なことだったか。もちろんそのパートナーの期待に添えないことで、つらい葛藤を抱えたこともあったでしょうけれど。 

 

 完璧なハッピーエンドではないけれど、バッドエンドというわけでもない。彼女が戦い支えられた人生をすばらしい演技でうつしだしてくれた良い映画でした。

 

 

おわり