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わたしたちに明日はない

映画をよく観てます

感想:「セッション(whiplash)」★★★★★

映画


感涙しました。最近観る映画観る映画素晴らしいものばかりで、今までわたし映画館で何を観てきたんだろうっていうくらい、わたしの映画史の更新が目まぐるしいです。
ちなみに、いくつか前の映画感想記事から記事のタイトルにその映画に対する星5つ評価を付け加えるようにしはじめたのですが、いま見返すとどの記事も全部星5マックスになっていて笑ってしまいました。いや、だってほんとに星5なんだもん!今回ももれなく星5です。むしろ突き抜けて6でもいいのでは?それは言い過ぎ?

年始からスタートした映画欲は、ただの発作のようなもので、数ヶ月もすればおさまるだろうと思っていたのに、どんどんのめり込んでいってしまっています。もう最近趣味を尋ねられたら音楽と答えず映画と答えるほどになってしまいました。ブログの映画感想記事も見返すとけっこう数ある。


この映画の簡単なあらすじは、プロドラマーを目指す学生と鬼教官の話というわりとどこにでもありそうなものなんですが、そこからは想像もつかない唯一無二のストーリーとなっています。わたしが今までどれだけベタな展開の映画を観てきたか思い知らされました。ベタがベターなこともありますけれどね。

謳い文句では、最後の10分で映画史が塗り変わる!というものだったのですけれど、わたしは映画史をよく知らないので実際それが塗り変えられたのかは置いておいて、しかしわたしのなかの映画史は確実に塗り変わりました。あの10分弱はほんとうに騙しに騙され圧倒されて、せめぎあう感情のなかまさかの感涙。さすがに泣くことになるとは思ってなくて、ハンカチの用意もなかったので、手でこっそりぬぐってぬぐって観ていました。友達に終わった後泣いた旨を伝えると、「泣くとこあった…?(笑)」と言われました。なかったけど、なかったけど!なんか我慢できなかったんですよ…!
こういう映画がほんとうに良い映画だと思うんです。言葉にできない、理屈を理解して泣いているんじゃなくって感覚に訴えられ涙が出るという。昨今の邦画は泣くシーンをちゃあんと用意しているものが多くて(まあ邦画に限ったことではないし、そういうベタな泣き所が一概に悪いということでもないのですが)、そこで泣くのもいいんですけれど、そうじゃなくって、向こうが紡ぐ渾身のストーリーにのめり込み、わけがわからないうちに感情がせりあがってきてしまいには涙になって目から出る、というこの体験をさせてくれる映画こそが、良い映画なんじゃないかって思うんですよ。ちなみにわたしは最近星5つけた映画は全部泣きました。…え?わたしが最近涙腺ゆるいだけ?でもそれらの映画には所謂泣き所というものは設けてはなかったんです。

話を戻します。この映画は音楽映画ということで、とにかく楽曲が素晴らしい。この演奏はDVDで観るんではなく映画館でみてこその迫力だと思います。最近そういう映画館で観てこその映画を映画館で観ることができているのでしあわせです。映画館ってこんなに最高な娯楽施設だったんだ!海外は映画料金もっと安くて、日本は割高らしいのですが、1800円を厭いませんね、これは。安いくらいですよ。
この映画では主人公が何度も練習する曲が二曲登場するのですけれど、いつも途中で中断させられ繰り返し同じところを叩かされたり、はじめから何度も叩かされたりするので、イントロとかけっこう覚えちゃいます。そしてふたつともかっこいい。問答無用でiPhoneにいれちゃう。

そして演技ですよね、J.K.シモンズ演じる鬼教官の言い知れぬ怖さは圧巻です。序盤では主人公が怒られやしないかとてもビクビクしながら観ていました。
たまに優しいとこを見せたかと思えば罵詈雑言で生徒を罵り物を投げてまわる。わたしがこの映画を観る前に想像していたのは「ミリオンダラー・ベイビー」的な師弟愛が少し過激になったもの、だったんですけど、全然そんなものではなくって、もうただひたすらにスパルタで、スパルタという言葉ですら生易しいように思えるくらい暴力的でした。優しさなんてトータルでみたらほぼゼロに近くて、教師はただ究極を目指すことだけしか考えていない。
言葉の暴力がすごすぎて、でも途中で「お前民話に出てくる妖精に似てるな」みたいな暴言には思わず笑いました。どんな暴言やねん。
途中から主人公にもその口の悪さうつってきていて、すごい暴言はきはじめます。そんな人だっけ?ってなるくらい性格も心なしか荒くなったような。というか、バンドの主演奏者の席に執着するあまり、途中から彼のなかの感情が抑えのきかない激しいものになっていったようにも思います。
彼の偉大になりたいという想いが、執着心が強すぎてついていけなくなることもあったけれど。なぜそんなに偉大になるということに執着するのか、できるのか。そこのところをもっと根っこから知りたかったかな〜という気もします。親戚に馬鹿にされるだとか、そこまで偉くもない地位の親がすこし嫌だったりとか、そういう場面はあったけど、それだけじゃスネアやスティック血まみれになるくらい練習し倒す理由として理解するにはちょっと難しいような。わたしが見逃したのかな?

というか、ドラムって叩きすぎたらあんなに血が出るものなのですね。マメくらいで済むかと思ってた。しかもあれは実際に彼が流しているものらしくて、そもそも彼が全部実際に叩いているときいて、素晴らしいとしか言えませんでした。最高かよ。

主人公はテンポに関してめちゃめちゃ怒られていたけれど、この映画のお話のテンポはとても良くて、展開も読めないものばかりで、というか読む暇もなく次の展開に移るので、単純におもしろかったです。
これはプロドラマーを目指していた過去のある監督自身の実話をベースにしているらしいですよ。音楽って楽しいことばかりじゃないし、やればやるほど辛かったし(わたしの場合は。もちろん楽しいこともあったからある程度続いたけれど)、最終的に絶対その努力が完全な形で身を結ぶってことは、御都合主義のフィクションストーリーじゃないわたしたちの現実では、そうあることじゃなかったりするんですよね。そもそもそういうことは音楽に限った話ではないんですが、今回はわたしも経験のある音楽をテーマにその現実を描いていたものだったので、よりわかりやすくわたしの心を揺さぶってくれました。


ここからラスト10分のネタバレ含む感想に入ります。先ほどいったように、努力が最終的に完全な形で身を結ぶことって、そうそうないと思うのですよ。今回のニーマンくんも、結局退学になりドラム関連の物を捨て、倉庫になおし、別の大学に編入という道に進みます。しかしラスト9分で鬼にもほどがあるフレッチャーの渾身の復讐に対し、最高の演奏でもって対等の立場にたち、観客やわたしたちを魅了することに成功するわけです。ここはほんとうによかった。
陥し入れられたと知った時、わたしも愕然としてしまったのですが、ニーマンくんは一旦舞台袖にはけお父さんの肩に逃げ込むものの、そこから踵を返す強さよね。度肝ぬかれました。
フレッチャー先生もニーマンくんの最高の演奏に、途中から生き生きと指揮をとりはじめます。この、さっきまで全力でニーマンくんを叩き潰す所存であったくせに、ニーマンくんが最高パフォーマンスを発揮すると手のひら返してくるのどうなの、という感じが最初あったものの、途中から、そういうことはどうだっていいんだという気持ちになりました。
フレッチャー先生ははじめから最高のパフォーマンスを求めて鞭打ちのようなレッスンをしていたのだし、彼は何一つブレてはいないのです。彼がずっと求めてやまなかったものをニーマンくんがようやく惜しみなく発揮したのを受けて、はじめて喜びの顔を見せるわけです。
まあでも、それにしたって鬼ですよね。はじめてフェスに出るという人ばかりのメンバーで、なおかつ今回スカウトに目にとまるかとまらないかで将来が大きく決まるという、メンバーにとって大切な舞台なのにそれを復讐に利用してめちゃめちゃにするという。鬼かよ。ニーマンくんに対する復讐のやりようも鬼かよ。人でなしかよ。


音楽映画としては良くない、という評もあるみたいですが、音楽の魅了を存分に描いた作品なんてそこらへんにゴロゴロあるんだし、こういう音楽の厳しい面をひたすらに描いた作品があってもいいじゃない、むしろ欲するわ!楽しいだけじゃないのだよ!
それに音楽の魅了は十二分に感じ得るものになっています。わたしは感じ取ることができました。最後の9分に詰まってますよ。
ジャズ専門の方にもクズ呼ばわりされているみたいですけれど、わたしはジャズのことよくしらないのでそういうポイントがわかりません。なのでわたしみたいなジャズに詳しくない人、おそらく大半の人間には問題なく楽しめますし、この映画をみてジャズに対するイメージが悪く変わったかといえばとくに変わってないし、もっといえばほかのジャズの曲も聴いてみたいという興味はめちゃめちゃ出ました。あの二曲ちょうかっこいいもん。


とにかく今年1位です。最強。




おわり