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感想:「博士と彼女のセオリー(The Theory of Everything)」★★★★★


映画『博士と彼女のセオリー』予告編 - YouTube

 

 日本では3月13日から公開されました「博士と彼女のセオリー」を公開より前に飛行機の中で一足先に観たんですが、たいへん気に入り、帰りの飛行機で2週目の鑑賞をしてしまったので、「バードマン」や「ゴーンガール」も観たのですが、先にこのタイトルから書きます。

 原題は「Theory of Everything」、直訳だと「すべての理論」「統一理論」というそうです。わたしは原題のまま「Theory of Everything」のほうがよかったんじゃないかな~と思います。まあ話は博士の研究内容や偉業よりも博士と彼女の話がメインなのですが、おそらくこの題名と難病モノジャンルであること、そしてアカデミー賞主演男優という話題性につられて映画館へ足を運び、イメージとのギャップに「つまんない映画だった」と言われそうでなんかいやだな~っていうのがあります。主演男優賞は納得の演技なので、そこについてのギャップはないんですが。事実すぎる栄誉です。

 

 ごめんなさい今回はとても長いです。とりあえず最初はいつも通りネタバレなしで感想を書きますね。それから順にストーリーを追って感想を書いていくので、未見の方はこれ以上は見たくないというラインを見極めて切り上げてください。ネタバレといってもスティーブン・ホーキング博士の半生を描いた映画なので、彼のことを知っているひとにとっては問題ないと思われますが。

 前述のとおり、スティーブン・ホーキング博士という天才物理学者のお話で、ざっくりしたあらすじは、ケンブリッジ大学で自由に遊んだり学んだりとごく普通の若者でありながら天才的な頭脳を持っていた彼は、大学でタイトルの「彼女」にあたるジェーンと出会い、研究に恋にと輝かしい毎日を過ごしていくのですが、去年ALSバケツチャレンジというチャリティー活動で名を広めた筋肉萎縮性側索硬化症という病気を彼は大学在学中に発症してしまい、余命2年を告げられる、というものです。

 

 それでわたしすごい好きなのが、主人公スティーブンとジェーンの出会いから発症前までの、恋におちてしあわせいっぱいのふたりをみるのがすごい好きなんです。そしてね、映像がすごくきれいなんですよ。ふたりが出会うシーンのパーティーでほの暗く青い画面、ふたりが舞踏会でお互いを知っていくシーンの電球のあたたかい色味やメリーゴーランドの幻想的な雰囲気、光が消えて男のネクタイやシャツが白く光る理由をさらっと説明することで彼が物知りであることがわかる超スマートなシーンの青白い画面。なによりもそのなかでしあわせそうなふたり!まだなにも障害がなく恋に落ちたてのふたりがお互いしか見えていない頃をきれいに撮れていると思いました。すごい好き。わたしも柄にもなく、理系めがね男子と改めて恋に落ちたいとおもってしまった。エディ・レッドメインの子犬のような愛くるしい笑顔が最強。

 そのあと彼の病気が発覚し、余命2年と知って誰も寄せ付けなくなるスティーブンを、ほんとうに愛しているからわたしは支えてみせるとジェーンは宣言し、そのままふたりは結婚をするのですが、ここの結婚シーンもすごく好き。定点カメラではなく手持ちのカメラでズームしたり、画面が手持ち特有のブレをみせたり、ホームビデオのような感じがすごい好き。こういうホームビデオ的な画面は後に子供たちとのシーンなどでも同じような撮り方がでてきて、そういうところは一様に大好きでした。

 病気という障害がありながらも、花びら舞うなかしあわせいっぱいのふたり。実際の本物のホーキング博士とジェーンさんの結婚式の写真も、この映画のふたりのすがたととてもよく似ていることをネットで画像検索をしたときに知って、びっくりしました。とくにホーキング博士演じるエディ・レッドメインホーキング博士にすごく似ています。顔が似ているとかじゃなくてほんとうに似せてきているといいますか。ホーキング博士はこの映画をみて、ほんとうに僕自身だと言ったとか言ってないとか。

 

 この映画を鑑賞直後は、なんでこの映画がこんなに気になるのか(いつも以上にこの映画に関して検索かけまくってました)わからなくて、ただ映像と音楽が好きなんだとしか思ってなかったんですが、よくよく考えてみると、この映画が難病を患った偉人の話なのに、困難をのりきることや彼がいかに偉い人物だったか、恋愛のすばらしさなどを綺麗に仕立て誇張し押し付けるという大衆向け鉄板技をこちらに仕掛けてこないスタンスが、わたしを魅了しているんじゃないかな、という結論になりました。そして人生はそう綺麗にうまくいくことばかりじゃないっていうのをちゃんと隠さずそのままみせてくるところですね。

 

 ふたりは反対押しのけめでたく結婚し、子供をひとりふたりともうけます。詳しい順番などは忘れましたが、スティーブンも研究を進めやがて博士号を取得、まわりの友人から祝福される一方、体はどんどん病気にむしばまれていきます。そのエディ・レッドメインの演技力ですよね、主演男優賞文句なしです。それに劇中ではどんどんからだが動かなくなっていくんですが、実際の撮影では時間を追って撮影したのではないらしく、今回はここ、今回はその前の時期にあたるシーン、などというふうにやっていったということなので、どんどんからだが動かなくなっていくイメージを持続させ反映させていくよりも難しい、撮るシーンの病気進行度にあわせて演技を変えていたというのが、とってもすごい。youtubeで彼のインタビュー動画などをみたけれど、その努力もすごかった。

 

 スティーブンの世話はジェーンがなんでもすべて引き受けていて、エディの希望もあり介護士などは一切頼まず、子供も増え、だんだんと生活がきびしくなっていきます。わたしひとりではむりだととうとう爆発したころ、母親が息抜きにと教会の聖歌隊へ入ることをすすめ、そこでジョナサンという気の良い男に出会うわけです。ジョナサンは妻を1年前になくしたさみしさから、スティーブンの世話を手伝うことを申し出ます、いいひとかよ。顔から良いひとっていうのがにじみ出てもいました。

 ただ手伝ってくれる男がひとりいるだけで、ジェーンの負担はぐっと軽くなり、家族みんなとジョナサンで楽しく過ごすホームビデオのようなシーンで再びあふれるのですが、3人目の子供ができた時点でその状況がどんどん変わっていきます。

 母親や父親、ジョナサンを交えて楽しく過ごしていたとき、母親から誰の子どもなのかわたしたちに知る権利があると、ジェーンとふたりきりのときに言われるのです。ちょうどその言葉を通りかかったジョナサンはきいてしまい、そんなふうに周りからみられているのであればこれ以上ここにはいられないと家からでていきますが、ジェーンはあなたがこの家族には必要だと引き止めます。そこで彼はジェーンに好意があることを吐露します。その家族の中にはいっていくことで、やっぱり避けられないというか、家族ごっこをしはじめると知的で美しくしたたかなジェーンのこと、好きになってもしょうがないですよね。心が痛かったです。そしてジェーンも彼に好意があることを告げるんですね。これも心が痛かった。

 でもですよ、この映画の感想で検索かけまくってたらたまに目にするのが「3人目は誰の子だったのか」という発言、これはスティーブンの子どもにきまってるじゃないですかと言いたい。3人目の子どもができたとき、ジェーンはジョナサンにそのことを伝えると、ジョナサンは動揺して「スティーブンときみはその…」と、スティーブンが病気で体が思うように動かないにも関わらず性行為をいまだにすることができていることに驚くという、その好意を知った今ではちょっとショックを受けているようにも見ることができるシーンがあったじゃないですか!と言いたい。

 

 そしてスティーブンは彼らの気持ちに気づいていたようで、ジョナサンとふたりきりになったときに、ジェーンをささえてほしいと伝えます。これはきっとそういう意味もふくまれていたんだと思います。彼は頭がいいから、気づかないわけありません。一緒にキャンプにいってやってくれと伝えます。

 ジェーンに対しても、自分が授賞式(だったか忘れましたがどっか遠いところ)に行っている間子供たちとキャンプに行くよういい、ジェーンはわたしひとりでは無理だと言うと、ジョナサンに来てもらえというのです。ジェーンはそこで一度はジョナサンに迷惑だわと断るも、結局スティーブンに押されて以前はスティーブンも一緒だったキャンプを、今回はジョナサンとジェーンと子供たちだけで行くことに。ふつうのなんの障害もない家族のようにあそんでまわる家族をうつす一方で、スティーブンは式の途中で発作をおこしてしまい、救急車で病院に運ばれます。そしてキャンプの夜、子供たちが寝ているテントのジッパーを静かにしめ、ジョナサンが寝ているひとまわり小さなテントへ向かい、ジョナサンと呼びかけるジェーンの姿が一瞬映されます。ああ…となりました。あれだけしたたかに家族をスティーブンを支え続けた女性でも、弱い部分はどうしてもでてしまうんですね。思いを心に秘めるにとどめることができずに、俗に言う不倫をしてしまったわけなんですが、彼女を責め立てる感情はあまりわきませんでした。心がぎゅっとなりました。

 

 病院で危篤状態であることを知った家族は朝早くキャンプ場を出発し、ジェーンは病院に向かいます。わたしは吹き替えで観たのでここよくわからなかったんですが、とにかくこのまま機械を外して安楽死をさせてあげるよう医者から提案をされるも、ジェーンは断固として受け入れず、しゃべれなくなってもいいから生かすように医者に言います。ここで彼女の強さが出ててすごくすきです。わたしだったらこのもたれかかるところのない場所で夫の人生をきめる重要な選択を迫られている時点でもう泣いてますよ。あんなに強くたっていられませんよ。

 手術を終え、しゃべれなくなったスティーブンにまばたきで会話できる道具の練習をジェーン自らやろうとするシーンのふたりがまた胸にきました。ふたりともほんとうに演技がすばらしい。

 

 ここからはもうざっくり感想をいいます。ちょっと終わりが見えなさすぎるので…。ジェーンはジョナサンとの関係をいったん終わらせたけれど、ジョナサンのかわりに雇った介護士とこんどはスティーブンがいい感じの関係になってしまいます。この介護士はジェーンとは違うタイプの女性で、スティーブンが彼女と一緒にアメリカ(だったっけ?)にいくことを伝えたシーンがとても印象的。ジェーンはスティーブンに、あなたを精一杯愛したわというようなことを静かにきちんと伝えるのが、また胸がぎゅっとなりますよね。

 

 結局このふたりはここで人生のパートナーであったお互いと別れ、別々のひとと別々の道をすすんでいくことになるのですが、スティーブンの業績をたたえ女王に王宮に招かれた際には、スティーブンはしっかり奥さんとしてジョーンと子供たちをつれ、王宮を訪れるわけです。(ここ、時系列は素直にとらえていいですよね?)

 ここでスティーブンがジェーンにいうせりふが、もうすばらしくてすばらしくて、映像もすばらしく美しくて、彼らふたりの人生が交差した奇跡を映像化することに関わった皆々様に深くお礼申し上げたい。

 

 そしてそこからどんどん巻き戻っていく映像、彼らのすごした日々、そして彼らのであったあの日の映像…。文句なしのすばらしいラストすぎます。「バードマン」も「ゴーンガール」ももちろんおもしろかったけど、この映画が私の中では今年一位だわ!

 

と思っておりました、が、イミテーション・ゲームがこれまたすばらしいできのいい映画だったので、2015年すてたもんじゃない、最高にいい年になりそうだという予感にみちみちております。

 

 

 

おわり