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Flower of life

映画をよく観てます

感想:映画「夢売るふたり」においてふたりが見た夢



昨日のアクセス数が40弱あってびっくりしました。新しくあげたエントリがたくさん見られてる様子もないし遡るほどエントリないし…なんでなんでしょう。




今年初の映画、しょっぱなからこんな暗い映画でいいのかという感じもありますが、ちょうど深夜にあっていたので西川美和監督の「夢売るふたり」を地上波で観ました。

夢売るふたり [DVD]

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他の方のレビューをみていると、やっぱりちょっとカットされていたみたいで、わたしが途中同窓会から上機嫌で帰ってきた母と話していたこともあり、ところどころ観てない部分もありましたけれど。以下ネタバレ含みます。


軽いあらすじは、夫婦が5年営んだお店が火事で焼けてしまい、再建するためのお金を結婚詐欺を重ねて集める、というものです。わたしこういう人を殺さない夢を叶えるための犯罪系ストーリーわりとワクワクするほうで、まあ結婚詐欺は人の心を弄ぶことになるので快いものではないですけれど、そんなワクワク感を携え軽い気持ちでみたらすごく暗い気分になりました。こういう映画をみると社会人になるのが嫌になります。

まず阿部サダヲ扮する夫、メンタル豆腐すぎというか、お店焼けてヤケになる(うまい!)のもわかるけれど、奥さんにあたったり酒に溺れパチンコうってひどすぎでしょ。そして不倫。お金をもらってかえってすぐに松たか子扮する奥さんにバレてしまう展開。この怒り心頭な松たか子がみててすごくよかったです、まあその状況は胸糞わるいんですけれど、その怒りをフツフツとさせて焼いた札束で夫にぶちまけるシーン、なんだか最高でした。
そこからいきなり結婚詐欺がはじまるんですけど、これはカットされてたんです?それとももともと説明省かれていたんですかね?
ここからしばらくは楽しかったです。ふたりで共謀して、着々と貯めていく。稼いだ金をポケットに自転車を二人乗りして帰路につく。この映画は自転車に乗るシーンがたくさん出てくる映画で、そのシーンはどれも好きでした。その自転車のシーンはふたりの関係を暗示しているという解釈をどこかでみて、なるほどなと思いました。

結婚詐欺は人の心の隙につけこんでお金を巻き上げるので、本来胸糞悪いものなんですけれど、今回はちゃんとそのひとの親身になって関係を途中まで築いておりその誠実さは本物だ!という自分でもわけのわからない感情から(半ば観ているだけのわたしまで騙されている気がします)、そこまで気分悪くなることなく見れました。それはほんとうに彼らのやり方が功を奏しているのか、それとも阿部サダヲの演技力の賜物なのか。
一応ひとりずつ借用書も逐一作成し、倍にして返そうねというセリフからも、こちらに犯罪をしている、騙し取っているという意識を薄めていたとおもいます。でもウエイトリフティングの選手だますときは心が痛かった。そのとき阿部サダヲの感情とシンクロしていたようにもおもいます。それと同時に阿部サダヲが夢を持っている純粋無垢な彼女に憧れのような感情を抱くのも、すごく心が痛かったです。

でもだんだん詐偽における嘘が多くなってゆき、夫婦の関係も崩壊していったところで、阿部サダヲ松たか子に俺が不倫したこととだらしない女たちへの憂さ晴らしなんだろ!みたいな内容のことを吐き捨てるシーンがありまして、それが印象に残っています。結局松たか子はもう6時だ、自分がそう思うならそういうことにしといてみたいなことをいって話を切り上げてしまうんですが、それが男女の喧嘩においてよくみられる女性のスタンスだみたいなことを評論家の宇田丸さんが言ってて、ウワ!確かにこんなひといそうだ!となりました。

後半はどんどんふたりの距離が離れていって、松たか子がどんどん淀んでいきます。その変遷が見事でした〜すごいこわかったです。最初のあの明るさはどこへいってしまったのか。自分が提案したことではじまった詐欺、結局相手の女に嫉妬もするし不安に思ってしまう描写がおそろしかったです。
阿部サダヲは火事の時ですら持ち出した板前の命である包丁を別の女の家に置いたままにしたり、自転車のうしろに違う女をのせたりと、そういう象徴的なシーンも多くて。
でもラストの子供の突拍子なさはわたしも えっ?!ってなりました。いや、いくら幼いといえど包丁であんなブッスリ人を刺すか?ささんでしょ。ってなりました。
そして阿部サダヲは子供の罪をかぶり服役しながら、窓から見えるのか想像上なのかわかりませんけど二匹のカモメを見上げ、それと同時に別の場所から松たか子もそのカモメを見上げる、それは詳しくわからないけれどもふたりはやっぱり通じ合った夫婦だということなのだと個人的にはおもいます。結局ふたりはこの一連の出来事で心が離れていったけれど、きっと服役がおわったらまたふたりで暮らしはじめるんだとおもいます。

もしわたしが脚本家なら、ピンチに陥るけどうまく回避できて、お店も夫婦関係も持ち直して、金借りたみんなに倍にして返して回るというエンドにしてしまうだろうなあ。みているひとはつまらないかもしれないけど。
はじめは夢みるふたり、とタイトルを間違ったりややこしいなと思ったりしましたが、観終わったあとこれを夢みるふたりとは間違わないですね、ほんと。でも夢を売っていたふたりはふただひ夢をみたからこそこの物語が幕切れしたわけで、夢みるふたりでもあながち間違いではないかな。ふたりはふたりの夢をみたのに、どんどん暗い闇のなかをつきすすんでいってしまったのよね。突拍子もないこどもの事件によってその終わりの見えない闇がおわって、またゼロから仕切り直しをしてほしいです。支え合う相手さえいれば、人生はいくらでもやりなおせると思っています。


年明けてはじめにみた映画がこんなに暗いものになるとは。とりあえずおもむろにグランド・ブダペスト・ホテルのDVDをAmazonで頼んでおきました。去年みた映画のなかで個人的にベストシネマでした。好きです。見直したらまた感想書こうかな。


おわり